自分の気になる曲や音楽家の方たちの調べもの過程で、このところ、作曲家、橋本国彦氏の名前をみかけることが多いので、所有の『日本歌曲全集5:橋本国彦作品集』を聴いてみました。

橋本国彦さん、ポピュラーなCM曲や歌謡曲、童謡、唱歌なども手がけていますが、わたしが橋本国彦さんを作曲家として意識しだしたのは、クラシック、歌曲『斑猫(はんみょう)』がきっかけでした。高校生のころだったのですが、そのころは日本の作曲家でまとめたレコードは、まだ少なく六本木WAVEでやっとみつけたこと、今でもよく覚えています。



『斑猫』は、1928年(昭和3年)の作品。詩人、深尾須磨子さんの自由詩に曲をつけたもの。この時代、自由詩に曲をつけるということは、日本ではまだ試みのないとても斬新なことであったうえ、クラシックの分野はドイツ主流であった中、近代フランス音楽の手法をとりながら独自の境地を。

曲が終わったかのようにみえ、最後の「うまくつかまえて襟飾りにでもしてください~♪」というところが、とても好きなのですが、こんな感じが、橋本作品の新しさだったのではないでしょうか。

45歳という若さでお亡くなりになってしまわれましたが、幅広く、数多くの作品を遺されていますね。ポピュラーなサイドでも、クラシックなサイドでも、それぞれ影響を受けている方も多いのではないかと思います(近年(?)では、上野耕路さんなど、なんとなくそんな気が)。

はじめはクラシックの楽曲から興味をもった、橋本国彦さんですが、気にするようになってから、実はその前にも聴いていた好きな曲もたくさんあることに気づいたり。興味を持ち始めたころには、Wikipediaのようなものはおろかネットで情報収集などできなかったということもありますが、意識しだしてから25年近くたっているいまも、まだまだ発見多し、です。

以下、いくつかおなじみの曲を。

『斑猫」とはちがったサイドでわたしが好きなのはこの曲♪歌詞ともに、フランス歌曲的要素を感じる作品。(そのうち書こうかとも思うサティにもこんな感じのものが)
『お菓子と娘』(唄:唐澤まゆ子)


有名な『城ヶ島の雨』は代表曲のひとつ。転調の感じが好きな作品。橋本作品だと知る前から、この転調に魅力を感じていましたが、あとから思えば、そこが「橋本国彦らしい」部分かと。
城ヶ島の雨(唄:藤山一郎)


こちらもおなじみ。『朝はどこから』(唄:安西愛子・岡本敦郎)


チェリオ! (唄:藤山一郎 小林千代子)


大大阪地下鉄行進曲(唄:德山璉・小林千代子)


[橋本国彦]
1904年9月14日 - 1949年5月6日没
東京都本郷生まれ。
東京音楽学校(現・東京芸術大学)卒
文部省の命により1934年(昭和9年)から1937年(昭和12年)の間、ウィーンに留学
帰国後は日本洋楽界きってのモダニストとして、作曲家・編曲家として活躍。
1933年(昭和8年)母校の教授に就任。門下に矢代秋雄を筆頭に、芥川也寸志、團伊玖磨、黛敏郎らがいる。1940年代前半には、軍国歌謡や、皇紀2600年奉祝曲の「交響曲第1番ニ調」を作曲。また十二音技法による創作を試みたりした。
戦後は戦時下の行動の責任を取って母校を辞し、『朝はどこから』などの歌謡曲や、戦火に倒れた人々を追悼するために独唱と管弦楽のための『三つの和讃』、日本国憲法の公布を祝う「交響曲第2番」などを発表。1949年、胃癌のため44歳で鎌倉にて逝去。

東京音楽学校(現・東京芸術大学)で音楽を学ばれた方ですが、ヴァイオリンと指揮法を学び、作曲はほとんど独学だったそう(当時は東京音楽学校には作曲科がなかったためもあり)。研究科であらためて作曲を。
当時、音楽学校で音楽を学ばれていた方は少なかったため、交流が密であったということもあるかとは思いますが、藤山一郎さんもしたっていたように、橋本国彦さんのまわりには一種のサロン的なものがあり、人望も厚かったようですね。その中にいたのが、『斑猫』の詩人、パリでも学んだ深尾須磨子さん、歌手の荻野綾子(大田綾子)さんや四家文子さん、徳山璉さんなど。橋本国彦さん、そして、四家文子さんや徳山璉は、昨日書いた藤山一郎さんのビクター入社の理由ともなった方であったり。

クラシックでは。日本の歌曲、滝廉太郎氏の『荒城の月』を起点として、山田耕作氏、信時潔氏(うちの子の学校の校歌はこの方作曲)の第1期とすると、第2期となったのが橋本国彦さん。
第2期を形成したということには、いろいろあると思うのですが、山田耕作氏などが音のもつ昨日の中での処理法として用いた長7、属9の和音を、橋本国彦さんは一個の独立した和音として提示、そして多くとりいれていくなど、ならではのスタイルを作っていったことがあげられると思います。

(投稿:日本 2010年5月23日、ハワイ 5月22日)


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