ひきつづき、自分をアミューズさせる音のことなど考えていて、そのひとつはエレクトリックなサウンド、電子音楽☆
ということで、ここ数日、あらためて、とか、未知だったものなど、さらに、ふらふらと、徘徊調べ。

そんな折、出会ったのがこちら。なんとも清らかで、うっとり…
夢みるような、バッハの『G線上のアリア』。

シンプルに響きつつも、いろいろな音を重ねた、浮遊感。漂いながら、包まれる感覚。
ずっとずっと聴いていたいような、心うばれる音色。

Delia Derbyshire - Air

ღ˘◡˘ற.。o☆。・:*:・゚*



このバッハの「管弦楽組曲第3番 BWV1068『G線上のアリア』」は、いままでも、ずっと長い間、さまざまなヴァージョンの作品を聴いてきており、すばらしい作品が多いのですけれど、デリア・ダービシャー(Delia Derbyshire)のアリアは、特別です。

あぁ、こんなすばらしいサウンドをつくりあげるひとは、いったいどんなひとなのだろう、と、この電子音楽女史、デリア・ダービシャーのことを知りたくなりました。日本語の情報は、もちろん、英語の情報も多いとはいえないのですけれど、すこしづつたどる足がかりになるには十分な情報をWikipedia:Delia DerbyshireとBBCで放送された特別番組映像を中心にさがすことができましたので。
参考にした動画:
デリアの同僚はじめ関わった方、影響うけた方のインタビューなどもあるドキュメンタリー
Delia Derbyshire of the Radiophonic Workshop BBC
Inside Out: Delia Derbyshire


デリア・ダービシャーは、1937年生まれ(2001年没)、イギリス、BBCラジオフォニック・ワークショップに所属し、音楽家、編曲家、作曲家であり、シンセサイザー、電子音楽で、数々のBBC放送作品も手がけていた方なのですね。

音楽家とはいっても、実際、BBCラジオフォニック・ワークショップにいたときには、その名は、外部には知られることのない裏方的存在。でありながら、BBCが放送で、電子音楽をとり入れはじめたころから、数えきれないテーマミュージック、BGMなどを実際に形にしていたのは、この方であったという。

最も有名なのは、こちら。日本ではあまりなじみがないということですが、ある時代をすごしたイギリスのひとびとには忘れることのできないテレビジョン・シリーズのSF番組『DR. WHO(DOCTOR WHO)』のテーマ。
作曲、そしてスコアを書いたのは、ロン・グライナー(Ron Grainer)ですが、そこから音をつくりあげ、ひとびとの心に残る永遠のSFサウンドにしたてあげたのが、デリア・ダービシャーなのです。

Doctor Who Theme:



こども向けにつくられた番組ではないながら、こどもみてしまう、そして、ときにその怖さでソファーのうしろに隠れつつ、でも、またみてしまう、というような思い出をもつ方が多いこの番組、その思い出トリガーとなるのも、テーマ曲やBGMとして使われている数々のサウンドなのだそうです。

たとえば

Delia Derbyshire:Ziwzih Ziwzih OO-OO-OO
「ジムジー、ジムジー、ウーウーウー♪」ちょっとこわいけど、かわいくもあるサウンド :)



まじめな顔をもちつつ、かわいさとポップなスパイスがあるところがデリアなサウンド。

BBCでのワークは幅広く、『DR. WHO』に限らず、教育番組、ドキュメンタリーと、さまざまな番組のBGMも手がけていたのですね。

Delia Derbyshire & Barry Bermange:Colours
こちらは、ラジオ。夢の色などについて語られ、背後で流れる、眠りのイメージがデリアのもの。
(Barry Bermange との共同ワーク)

Dreams:Inventions for Radio



こんなかわいく軽やかなものもあります。

Delia Derbyshire:Mattachin



という感じで、デリアがBBCラジオフォニック・ワークショップ所属していたときのワークを聴いてきてみましたが(動画音源もさがすともっとたくさんあります)、すこしさかのぼって、放送音楽をはじめる前のことなどもすこし調べてみたり。

デリア・ダービシャーは、コベントリー生まれ。コベントリーは軍事産業も多くあったことから、第二次世界大戦ではドイツ軍による空襲、大空襲があった場所。幼いデリアも空襲を経験します。激化の気配をうけ、ロンドンへ。

戦争のイメージ、サイレンなどは、すべての音に関心をよせていたデリアの心に深く刻まれていたともいわれているようです。

4歳ですでに読み書きを覚え、小学校では、ほかの生徒にわからないところを教えるなど。学校の勉強は、常に成績優秀。自身は、あらたまった学習というより、「ラジオからさまざまなものを学んだ」と語っていたそう。やはり、音、感覚派なのですね。そして、きっと周りのさまざまなものへの関心と、それを吸収し、さらに展開することを才をもっていたのでしょうね。そんなデリアは、8歳のとき、買ってもらったピアノを弾きはじめ、勉強も熱心ながら、音楽への興味を深めていったようです。

高校卒業後は、女子でカレッジで勉強をする者が多くはなかった当時、奨学金を受け、大学進学。数学を専攻しつつも、音楽の方がむいているのでは?と思い、音楽を専攻。修士は数学、音楽ともに取っているようですね。

そして、職業として選んだのは、やはり音楽。レコード会社、デッカに就職を望むものの女子は事務でしかとっていないといわれ。国連(ジュネーブ)で教育のポジションを得て、カナダ、南アフリカなどで、音楽と数学を教えたりしたのち、ふたたび英国にもどり、Boosey & Hawkesという音楽出版社でアシスタント職につき、その後、機会あり、すぐにBBCに見習い入局。

入局は、1960年のこと。そこで、1958年にスタートしたばかりのBBCラジオフォニック・ワークショップのことを知り、晴れて1962年に配属。その後、11年間、サンプリング、シンセサイザーなど実験的な手法も用い、さまざまな放送音楽を手がけていくことになります。その数はわかっているだけでも、およそ200曲。

そんなデリアのBBCラジオフォニック・ワークショップでのワーク。どのように音をつくりだすかという説明映像。

Delia Derbyshire:How to make sounds (Japanese Sub 日本語字幕とおまけ曲つき)



ただし、先にものべたように、1局員としての扱いであり、中での実力は認められ、放送音楽の仕事を楽しみつつも、名前のクレジットも残されず、その才能をもっと生かしたいという、ジレンマも味わうこととなったようです。

傍らで、1966年には、同じく、BBCラジオフォニック・ワークショップのメンバーであったBrian Hodgson and EMS founder Peter ZinovieffとUnit Delta Plusを結成。

Anthony Newleyとも"Moogies Bloogies"をレコーディング(アンソニー渡米のためレコード化ならず)。

Delia Derbyshire and Anthony:Newley Moogies Bloogies



1973年には、BBCを離れ、映画『The Legend of Hell House』のサントラを手がけるものの、作曲家としての音楽活動を中断。結婚(ただし、いままでの何かを見失ったりしたということもあるのか、アルコール中毒などにおちいってしまったようです)。

1990年代に入り、再び、電子音楽の世界にもどり、Peter Kemberと活動をしたりしはじめた矢先、2001年、64歳、乳がんで他界されてしまいます。

復帰をしたころには、すでに、BBCラジオフォニック・ワークショップでの功績、イギリスのテクノミュージックの土台をつくったひととして、じょじょにその功績も明らかになりはじめており、次世代の電子音楽、シンセサイザーミュージックの音楽家、愛好家などからは、支持をえはじめていたようなのです…
いまでも、デリアの功績をたたえる音楽イベントなどはおこなわれてるようですね。トリビュート的なミックスもありのようです。

認められるのが、かなりあとになってしまったというのは、残念ですが、いまでは、ユニバーシティー・オブ・マンチェスターに、放送局で使用された以外の未発掘だった個人の音源なども保管、デジタル化されており、きちんとアーカイブされている(まだ途中かも)そうで、この偉大な功績が保存されていく、その過程には、ひと安心でもあります。


デリア・ダービシャーのこと調べていたら、各国の電子音楽研究局のようなものにもさらに関心がでてきてしまいました…。今日、明日というわけにはいきませんが、これからの課題に。

(きょうも、だらんと長くなってしまいました。。)

[黎明期、各国の放送音楽・電子音楽集団のこと]
フランス:パリ放送局「ミュージック・コンクレート」(1940年代末)
ドイツ:北西ドイツ放送局(1950年代初頭)
日本:NHK電子音楽スタジオ
イタリア:ミラノ放送局(1956年)
イギリス:BBCラジオフォニック・ワークショップ(1958年)

BBCラジオフォニック・ワークショップは、その路線として、また特別なものもあったようですね。このあたりは、田中雄二さんのサイト参照で(上記、集団の情報もこちらより)。

POP2*5(ポップにーてんご):[■『電子音楽 in the(more lost)world 』(追加レビュー)]NHKの新番組『ドクター・フー』とBBCラジオフォニック・ワークショップ

(投稿:日本 2011年11月16日、ハワイ 11月15日)

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