片岡義男さんと小西康陽さん共著である『僕らのヒットパレード』、最近すこしづつ読んでます。

この本、今年の2月に発売になったものですが、もとはおふたりによる「芸術新潮」連載のリレーコラム他、対談や音楽エッセイを収めたというもの。
まえがきとあとがきにある、それぞれの一文にあるように、音楽、ことレコードへの思いをつづったエッセイ集となってます。

引用:
「「LPは魔法だ。過去のある時あるところで流れた時間が、音楽にかたちを変えて、LPの盤面の音溝に刻み込んである。その音溝から音楽を電気的に再生させると、過去の時間が現在の時間とひとつになって、現在のなかを経過していく。何度繰り返しても、おなじことが起きる。これを魔法と呼ばないなら、他のいったいなにが魔法なのか。」(片岡義男:「まえがき」)」
「「レコードを愛することと、音楽を愛することは似ているようだがまったく違う。レコードが素晴らしいのは、そこに封じ込められた音楽や会話、あるいは音のすべては、過去に奏でられ、発せられたものだ、ということだ。」(小西康陽:「あとがき」」

この本を知ることとなったきっかけは、ひと月半ほど前によいなぁと思い、知った、アール・ボスティックから。
EARL BOSTIC 「アール・ボスティックを聴きはじめる」

ボスティック、レコードなどの情報はあるものの、日本語による情報がほんとうにすくなくて。英語でも入り込んだような記述はネットでは多くはないのです。ただ、書籍関連などを調べると、R&Bものではとても多く、かなりの影響もうかがえ、しかも、レコードの枚数もかなりに多く。そんな関心からたどりついたのが、この「僕らのヒットパレード」にある「アール・ボスティックをききなおす」というものでした。ただし、このときは、その内容はわからず、小西氏、片岡氏のどちらによる文章なのかも。でも、なんとなく、片岡義男さんなんだろうなぁ。。と。

そこで、まずが図書館で借りてみようと。

興味あるものすべてを購入できないのがちょっとつらいところですが、本に関しては、まずはすこし読んでみてから購入をきめることも多いのですよね。で、まだ、ぜんぶ読んでみてはいないのですが、このエッセイ集、よいですね。どれもみじかく小気味よく、そこにとてもよい空気が流れている文章なので、みじかめのティータイム読書用に手元にあってもよいかなぁと思ってます。

ということで、「アール・ボスティックをききなおす」です。

そこには、片岡義男さんとボスティックの出会い、テナー・サックスのこと、などの思い出がありました。

片岡義男さんとテナー・サックスの出会いは、『トゥイードル・ディー(トゥイードリー・ディー)』。この曲は、1954年、1955年当時もふたりの歌手、ラ・ヴァーン・ベイカーとジョージア・ギブスによって歌われ(そのすこしあとにも、ほぼ同時であったり、また数年後であったり、たくさんのシンガーにカヴァーされますね。オリジナルはやはりベイカーみたいですね)、歌はギブスのものが好きだったけど、ベイカーによるヴァージョンの間奏にある数小節のサックスソロに目覚めたと。(注:ここは、ボスティックではないです)

これをきっかけに、テナー・サックスの音に興味をもちだし、何かといえば、いろいろな曲の中でのテナーマンの演奏に耳をかたむけだしたのだと。そんな中で、ある日、強力にとらわれたのが、たまたま聴いたアール・ボスティックの「ブルー・ダニューブ」の演奏だったそうで(さがしてみたのですけど、これ、レコーディングもにはないかもですね。「ダニューブ・ウェイブス(ドナウのさざなみ)」の方はありましたけど。ボスティック、クラシックやいろんなポピュラー音楽のアレンジものをやってるので、きっと「ブルー・ダニューブ(美しく青きドナウ)」も演奏されてたのでしょうね)。

「ブルー・ダニューブ」ではないですけど、「ダニューブ・ウェイブス」をここに

Earl Bostic: Danube Waves

まえに、わたしなり「アール・ボスティックを聴きはじめる」でも書いてみましたけど、この方の音は、ほんとうにいいですね。艶があって、官能的だあり、力強く、とても個性がありながらも、奇をてらいすぎていない。日本で言うならば歌謡的な要素もあるような。そして、この「黒い音」はR&Bへと、なのでしょう。

片岡義男さんは、26歳のときに、みずから奏るために、テナー・サックスを手にとったそうで、その指導にあたったのは、SF作家であり、もと広瀬正とスカイトーンズというバンドももっていた、広瀬正さん(この方は、この方で1エントリーくらい必要なので、きょうのところはリンクです)。
Wikipedia:広瀬正
神保町系オタオタ日記:広瀬正とスカイ・トーンズ

その広瀬正さんが、テナー・サックスについて、いろいろ教えたあとに最後に参考までといって基地のPXでもとめた何枚かアメリカのシングル盤を片岡義男さんにさしあげたそうなのですが、その中にもアール・ボスティックがあったという思い出も。そのときにあったのが『メランコリー・セレナーデ』と『ホワット・ノー・パールズ』だそうです。

Earl Bostic: What! No Pearls?
こちらは、あのグレン・ミラーの『A String of Pearls』から、ひねったようなボスティック作曲の作品。

なんだか、まとまりありませんが、アール・ボスティックからの出会い、さらにその魅力感じる「アール・ボスティックをききなおす」であり、すてきな音楽の思い出、レコードの魔法がたくさんの「僕らのヒットパレード」です。

(投稿:日本 2012年4月22日、ハワイ 4月21日)

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