先日から読みすすめている『僕らのヒットパレード』(片岡義男/小西康陽(著))から。
読みすすめてるというか…いちど通しでは読了しているのですけど、また気になったことなどを音とともに読みなおしで。

このレコード・エッセイ集を手にとって以来、片岡義男さんの語る、「出会いなおすあの頃の日本」というタイトルのついた文章を何度かくり返し読んでいます。ここに書かれているナンシー梅木さんの作品集『ナンシー梅木 アーリー・デイズ1950~1954』を聴きながら。

この『ナンシー梅木 アーリー・デイズ1950~1954』は、ナンシー梅木さんがまだ日本で活躍していたころにレコーディングされた25曲のうち21曲が収められたものですが、片岡義男さんの語るように、アーリー・デイズとはいっても、「日本での彼女には初めの頃しかない」なのですよね。1950年代前半、日本でも多くの女性ジャズ歌手が活躍されましたが、女性ジャズ歌手がうまれたともいえるし、多くの女性歌手がジャズを歌っていたともいえる時代。そんな中でも、ナンシー梅木さんは、片岡氏にとって、唯一、違和感をおぼえずに英語での歌唱を聴くことができた歌手であると。

また、片岡氏にとって、ナンシー梅木さんそのものが、そのころの日本、オキュパイド・ジャパンの象徴でもあるのだと語られています。彼女の東京への上京、ジャズ歌手としての人気の高まっているときに決めた渡米、MIYOSHI UMEKIとしてのアメリカでの成功。そんな一連の流れが。

片岡氏も象徴的な一曲として選んでいた『I'm Waiting For You』、しみじみとよいですね。『君待てども』、平野愛子さんヒット、東辰三さん作の名曲ですが、英語版であるこちら。ほんとうに

歌いあげるといったようなスタイルではなく、口ずさむようなさらり感がありながらも、しっかりと心にはいってくるこの感じは、まさに、「奥ゆかしさ」、「しとやかさ」のようなものを感じさせながら、外(日本の外という意味での)の世界でもわかる美しさが。いろんなエピソードもあるおちゃめでおもしろい方でもありますけれど、その歌は魔法のよう。

日系移民の祖父をもち、二世であった父、そして、東京生まれながらアメリカでの暮らしもあった片岡氏は、ふたつの国のあいだの感覚をもってたことと思われ(これはその後もずっとですね)、日々感じていたものは独特でもあったと思うのですが、この視点は、なるほど、といった感じです。

そんなことを思いながら、このCDに収められた21曲を、レコーディング年を追ってみたり、ほかにもいろいろと気になり、注力しながら、さらにという感じでくり返し聴いてみました。

歌唱はもちろん、あらためて、演奏も、すべての楽曲においてばらしいですね。レイモンド・コンデ氏率いるゲイ・セプテット、多忠修とゲイスターズ、与田輝雄とシックスレモンズなど。曲、それぞれに感想や想いはあるのですけれど、そのあたりはアルバムでの解説もくわしいので。
ショパンのノクターンがベースとなっている三木鶏郎さん作詞、松井八郎さん編曲の『泣きたいような』も好きな1曲。『今宵夢で(Vaya Con Dios)』も、日本ビクターでの最後のレコーディングであったという背景にふさわしく。

(投稿:日本 2012年5月4日、ハワイ 5月3日)

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